tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

聖書外典偽典(旧約偽典)『エノク書』17

旧約偽典『エノク書

 

 

 第88章

 

 

 私ははじめに出て来たあの4人の内の一人を見た。

彼は天から落ちたあの最初の星を捕まえ、手足を縛って谷に投げ込んだ。

この谷は狭くて深く、身の毛もよだつような、真っ暗な所だった。その中の一人が刀の鞘を払って、例の象とらくだとロバに渡した。すると互いに入り乱れての斬り合いとなり、これがために大地全体がガタガタ揺れた。

 

 私が幻に見たところでは、出て来たあの4人の中の一人が天から石を投げつけ、馬のような性器をぶら下げた巨星を全部集めて連れて行き、どれもこれも手足を縛って地の裂け目に放り込んだ。

 

 

 

 第89章

 

 

 その4人の中の一人が例の白牛の所に行って、こっそりと何か教えを授けたが、彼はガタガタ震えていた。彼は牛に生まれたのだが、後に人間になり、大きな箱舟を造り、それに住んだが、他に3匹の牛が一緒に住み、彼等の上には蓋が被さった。

 

 再び目に天をあげると、屋根が高く引き上げられ、その上に7つの水門があり、この水門から多量の水を一つの囲いに注ぎ込んでいるのが見えた。

私がまた見ると、地上のあの大きな囲いの所に泉が口を開け、その水はこんこんと湧き出し、地上に、嵩を増し、あの囲いは地上から見えなくなり、やがて全域が水に覆われた。その上に水と暗闇と霧が増し加わり、水嵩はと見てみたところ、水はあの囲いの高さを越えており、囲いからあふれ出し、地上に溜まっていた。

 

 その囲いに集められた牛は全部その水に溺れ、のまれて滅びていくのを私は見た。

箱舟は水の上に浮かんだが、牛も象もらくだもロバも他の全ての地上の獣と共に全部溺れ、もはや私の目には入らなかった。

彼等は水の中から出て来ることが出来ず、淵にはまって滅びた。

 

 私はまた別な幻で、例の水門が高い屋根から取り払われ、地の泉が干上がり、他の淵が開くのを見た。水がその中に流れ込みはじめ、やがて大地が姿を現し、箱舟は地上に止まり、闇は退いて、光が現れた。

 

 人間になった例の白牛は3匹の他の牛に伴われて箱舟を出た。

3匹の牛の中の一匹は先の牛に似て白く、その内のもう一匹は血のように赤く、他の一匹は黒かった。その白牛は彼等と別れた。

 

 ②彼等は野獣や鳥を産みはじめ、彼等全部から色んなものが生まれた。

獅子、虎、犬、狼、ハイエナ、猪、狐、兎、豚、鷹、ハゲタカ、鳶(とび)、鷲(わし)、鳥。その中に白牛が生まれた。

彼等は互いに噛みつき始め、彼等の間で生まれた先の白牛は野ロバと、またその中に白牛を生み、野ロバは数を増した。これから生まれた牛は黒い猪と白い羊を生み、この猪は多数の猪を生み、その羊は12匹の羊を生んだ。

この12匹の羊が成長した時、その内の一匹を彼等は野ロバに渡した。

野ロバはまたこの羊を狼に渡したので、羊は狼の中で育った。

 

 主は11匹の羊を連れて来てそれ、先の一匹と一緒に狼の中に住み、草を食むように仕向けられた。彼等は数を増し、いくつもの羊の群れとなった。

狼は彼等を恐れはじめ、彼等を圧迫し、彼等羊の子を滅ぼし、水を満々とたたえた河にその子を投げこんだので、羊達は自分の子のことを泣いて主に訴えた。

狼の手から救出された羊は逃げ出して野ロバの所に身を寄せた。

 

 私は羊達が声を限りにその主に向かって泣き叫び、懇願しているのを見た。

ついに羊達の主は彼等の声に応じて高い所から降りて彼等の所に来て、彼等の有様を目にされた。主は狼の手を逃れたあの羊を呼んで、狼のことについてこれと語らい、羊に手を付けないよう諫めさせることにされた。

 

 羊は主の命を体して狼の所に出掛けて行った。ところで別な羊がこの羊に出くわし、一緒に出掛けた。彼等は2匹一緒にその狼達の集まりに出席し、彼等と語らって、以後羊達に手を付けないように諫めた。

その時、私は狼を見たが、羊達に対していよいよ辛くあたり、乱暴の限りを尽くす有様で、羊達は泣き叫んだ。

主は彼等羊の所にやって来られ、狼共を殴りはじめられたので、狼共は嘆きはじめ、羊達は泣き止み、以後もう泣き叫ばなくなった。

 

 私は羊達が狼の手に脱するのを見た。

狼は眼が曇りながらも、全力でこの羊達を追跡すべく出て行った。

羊達の主は彼等と歩みを共にして、これを導き、羊はみな彼の後に従った。

彼の顔は輝かしく、その姿は恐ろしく、威厳があった。

 

 狼と言えば、羊を追い始めたが、とある海のところでやっと追いついた。

この海は2つに割れて、彼等の前で水は両側に立ち上り、彼等を導いてこられた主は彼等と狼の間に立ちはだかられた。

狼共は羊がまだ見えないので、この海の中に入って行き、その海の中を羊を追って走った。羊の主が見えた時、逃げ出そうと引き返しかけたが、その海は一塊になり、突然本性に立ち戻ったかのようになり、水は辺り一帯にあふれ、嵩を増し、ついに狼共を覆いつくした。私は羊を追って来た狼が溺れて全滅するのを見届けた。

 

 ③羊達はこの水も草もない砂漠へと出て行った。

彼等は目を開いて見始めた。私は羊達の主が彼等を養い、水と草を供し、あの羊が彼等を導いて進んでゆくのを見た。

その羊は高い岩山の頂に登り、羊達の主は彼を彼等のところに遣わされた。

それから私は羊達の主が彼等の前に立たれるのを見た。その姿は恐ろしく、力強く、羊達は皆彼を見て恐れた。

彼等はみな彼を恐れ、おののき、彼等の間にいるあの羊に叫んだ。

「我々は主の前に立っていることも、主を見つめることも出来ない。」

 

 彼等の導き手たるあの羊は再びあの岩山の頂に登って行ったが、羊達は目がかすんで、彼から示された道を踏み外しはじめたのに、その羊はこれに気づかなかった。

羊達の主は彼に対してカンカンに怒られた。

あの羊もこれに気づいて岩山の頂を下りて羊達の所へ来たが、大多数が目をくらまされ、自分が教えてやった道を踏み外しているのを見出した。

 

 彼等はこれ、(モーセ)を見て恐れおののき、もとの囲いに戻りたいと願った。

あの羊は、他の何匹かの羊を連れて道を踏み外した羊達の所へ行って、これをぶち殺しはじめたので、羊達は彼を恐れた。その羊は、迷い出した羊達を連れ戻し、彼等は自分達の囲いに戻った。

 

 私はそこで幻を見たが、あの羊が人間になって羊達の主のために家を建て、その家で全ての羊を奉仕させた。

私は羊達を導いてきたあの羊に出くわした羊が死の床につき、全て大きな羊達が死に絶えて、小さいのが代わりに起こり、草原に至り、川に近づくのを見た。

彼等を導いてきた、人間に変わったあの羊は彼等と別れて死の床についた。

全ての羊が彼を訪ね求め、彼の死を激しく泣き悲しんだ。

 

 私は、彼等がその羊のことを嘆くのを止めて、例の川を渡るのを見た。

そこで死の床についた者に代わる指導者として2匹の羊が立って、彼等を導いた。

私は、羊達が素晴らしい場所、快適で見事な土地に入るのを見た。

また、この羊達がたらふく食べるのを見た。

あの家はその快適な土地でも彼等と共にあった。

 

 ④彼等の目は開いている時もあれば、曇っている時もあったが、やがて別な羊が立って彼等を導き、皆を悔い改めさせる。そうするとまた目が開くのだった。

犬や狐や医の志位がこの羊達を食い荒らしはじめたので、羊達の主は別な羊、一匹の雄羊を彼等の中から立てて皆を導かせられた。

この雄羊は犬や狐や猪を右に左に突きまくって、とうとう全滅させてしまった。

その羊は目が開いて、羊達の中に居る雄羊を見ると、栄誉をかなぐり捨ててその羊達を突き始め、これを踏みにじって、何ともいただきかねる乱行となった。

 

 羊達の主はその羊を別な羊の所に遣わし、これを立てて、名誉をかなぐり捨てた羊に代わって、羊達を導く雄羊とされた。

この羊は出掛けて行ってその別な羊と膝をつきあわせて語り合い、これを雄羊に昇格させ、羊達の君、また指導者としたが、この間ずっと犬どもは羊達を悩まし続けた。

 

 第1の雄羊は第2の雄羊を追い廻し、第2の雄羊は起って逃げ出した。

私は犬どもが第1の雄羊をやっつけるのを見届けた。

第2の雄羊はたって小羊達を導いた。この雄羊は多数の羊を生んで死の床についた。

その代わりに子羊が雄羊になり、羊達の君または指導者になった。

この羊達は成長、繁殖し、犬や狐や猪は一様にこれを怖がって逃げ出した。

その雄羊はあらゆる野獣を突き殺し、羊達に対する野獣の権威は失墜し、何一つ奪い取る事は出来なかった。

 

 その家は拡大、拡張され、その家の上に羊の主のための高い塔が建てられた。

この家は低かったが、塔は際立って高かった。羊達の主がその塔の上に立たれると、盛沢山の犠牲(いけにえ)が彼の前に運ばれてきた。

 

 ⑤再び私は羊達を見たが、彼等は迷い出して思い思いの道に行き、彼等のこの家を棄てた。羊達の主は羊達の中から何匹かを召して、羊達の所に遣わされたが、羊達はこれを殺し始めた。

その内の1匹は助かり、殺されずにすんだが、すっ飛んで逃げながら羊達のことを喚(わめ)き散らした。羊達に殺されようとしたところを、羊達の主が羊の手から助け出して下さり、主は彼を私の所に引き上げ、そこに坐らせられた。

 

 他にも多数の羊を彼はこれらの羊の所に遣わし、彼等を諫め、彼等のことを嘆かしめられた。その後、彼等が羊達の主の家とその塔を棄てて、すっかり道を踏み外し、目がくらんでしまうのを私は見た。

 

 私はまた、羊達の主が彼等の群れの一つ一つを散々に殺しまくられるのを見た。

ついには、彼等羊達は他から殺される運命を自ら招き、彼の聖所を明け渡す始末となった。彼は彼等を獅子、虎、狼、ハイエナ、狐、その他ありとあらゆる獣の手に渡して顧みず、これらの野獣はその羊達をさらい始めた。

 

 私は、彼が彼等のこの家と塔を棄てて、彼等をことごとく獅子の手、ありとあらゆる獣の手に餌食として投げ与えられるのを見た。

私は力一杯に叫んで羊達の主に呼びかけ、彼等がありとあらゆる野獣に食われているのを見てもらおうとした。

彼はこれを見ても動じず、むしろ彼等が散々に食い荒らされ、さらわれるのを楽しんでおられた。そして、彼等をありとあらゆる獣の餌食になるがままに放置された。

 

 彼は70人の牧者を召し寄せてこの羊達の所に遣わし、これを牧させようとされた。彼は牧者達とその配下の者に言われた。

「これから君達は各々この羊共を牧し、わたしが君達に命じることを全て行え。

わたしがきちんと数を数えて渡し、その内のどれが滅びなければならないのかも君達に言うから、それだけを滅ぼすのだ。」

 

 彼はその羊達を彼等に引き渡された。彼はまた別の者を召し寄せて言い渡された。「いいか、心して牧者達が、この羊達に対してすることを一々見定めるのだ。

わたしが命じた以上に滅ぼすに違いない。牧者達によってもたらされる被害に行き過ぎがあったら残らず書き留めよ。わたしの命令によっていくら滅ぼしたか、また自分勝手にいくら滅ぼしたか、牧者一人一人について滅ぼした全ての数を書き留めよ。

どれだけ自分勝手に滅ぼし、どれだけ殺される方にまわしたかを数字を挙げてわたしの前で読み上げよ。これで彼等に突き付ける証拠が出来、わたしは彼等牧者達のやることが一切判り、彼等を裁きに引き渡すことも出来、彼等がやっていることを見て、わたしが出した命令に則っているかどうか判ろうというものだ。

だが、彼等に悟られるな、見抜かれるな。また彼等をとがめるな。牧者達が滅ぼすのを一人一人につき1回1回書き留めて、一切をわたしに報告するのだ。」

 

 私が見たところ、その牧者達はその時羊を飼っていたが、やがて、命じられたよりも多くを殺し、滅ぼし始め、羊を獅子の手に放置して顧みなかった。

獅子と虎はその羊の大多数を食い荒らし、それに猪まで加わり、また例の塔に火をつけ、あの建物の土台を覆した。私はあの塔のこと、あの羊の家が破壊されたことを非常に悲しんだ。それ以降私は、羊達がその家に入っていくことがあるかどうかを見ることが出来なくなった。

 

 ⑥牧者とその手下の者達はこの羊達をありとあらゆる獣に引き渡して餌食とさせた。その内の1匹1匹が決まった時、決まった数だけ引き渡され、もう1匹の獣はそれぞれ何匹ずつ殺したかを記録に取った。どれも指定された以上に殺し、滅ぼし、私はこれらの羊のことを激しく泣き悲しんだ。

このように私は幻の中で、記録係の者が毎日あの牧者によって殺される1匹1匹の記録をとる有様を見たが、彼は彼等牧者達が行い、1匹1匹消し、滅びに引き渡していった一切を記録した書を、羊達の主のところに携えのぼり、献じ、お見せした。

その書は羊達の主の前で読み上げられ、主は書を手に取って読み、封をしてそこに置かれた。

 

 ⑦その後私は牧者達が12時間牧するのを見たが、あの羊達の中の3匹が戻って来て内に入り、あの崩れた家の建設にかかった。

猪共が妨害したので、仕事が出来なかった。彼等は以前のように再度建築にかかり、あの塔を建て起こし、高き塔と名づけ、その塔の前に再び祭壇を設け始めたが、そこに並べられたパンはすべて穢れていて、清くなかった。

 

 これら一切のことについて、羊達の目は曇って見えず、彼等の牧者達も同様であった。彼等は牧者達に多数引き渡されて滅ぼされ、彼等は羊を足で踏みにじり、食いものにした。

羊達の主は、全ての羊が野に散り散りになって彼等獣達の中に紛れ込んで、彼等牧者達が獣の手から救い出さなくても平然としておられた。

あの記録書をまとめた者がこれを携えのぼり、彼、主にお見せし、羊達の主の家で読み上げ、彼等のことを執り成し、牧者達の所業を一々示して嘆願し、牧者達全てを彼等に告発した。彼はその本を取り上げ、彼の傍らに置いて退出した。

 

 

 

 第90・91章(略)

 

 

 

 

 

◆補足文

エノクのこの幻が動物で表現されているため、(私の個人的かもしれませんが)非常に分かりにくいので、『旧約聖書外典・下』関根正雄訳による説明を参照して下さい。

 <エノク書

第88章のタイトル

「大天使達、堕天使を罰する」

第89章の各タイトル

1~9「大洪水とノアの救い」

10~27「ノアの死後、出エジプトまで」

28~40「イスラエルの荒野の旅、律法の授与、カナン入境」

41~50「士師時代から神殿建設まで」

51~67「南北2王国とエルサレムの滅亡」

68~71「天使の支配第一期、エルサレムの滅亡から捕囚民の帰還まで」

72~77「第ニ期、クロスからアレクサンドロス大帝まで」

となっています。