tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

聖書外典偽典(旧約偽典)『ヨベル書』6

旧約偽典『ヨベル書

 

 

第27章

 

 長男エサウの言葉は夢でリベカに伝えられ、彼女は人をやって次男のヤコブを呼んで言った。

「ごらん、エサウ兄さんはお前を殺して怨みを晴らそうというつもりらしい。この際、私の言うことを聞き、起って私の兄弟のラバンの所に逃れ、あそこにしばらく居なさい。そうすれば、いずれ兄さんの怒りも解け、お前に対する怒りもおさまり、お前の仕打ちもすっかり忘れてくれるだろうから、その時は私が人をやってあそこからまた呼び戻してあげよう。」

 ヤコブは言った。

「私は怖くなんかありません。兄さんが私を殺そうというなら逆に殺してやります。」

 彼女は言った。「一日のうちに我が子2人とも失くすことなんかできはしません。」

 ヤコブは母リベカに言った。

「いいですか、お母さんもご存じのように、お父さんはもう年がいって、眼はかすんで見えなくなっています。ここで私がお父さんを見捨てては決してよくは思われないでしょう。お母さんたちを見捨ててしまったんでは父上は腹を立てて私を呪われることでしょう。私はまいりません。但し、お父さんが私を遣るとおっしゃるのでしたら、その時はまいりましょう。」

 リベカはヤコブに言った。

「私が行って、お前を遣ってくださるよう話してみましょう。」

 リベカは行ってイサクに言った。

エサウが妻に迎えたあの2人の、ヘテ人の女のお陰で生きるのが辛くて嫌になりました。ヤコブが土地の娘の中から妻を迎えるようなことでもあったら、今更生きて何になりましょう。カナンの女達ときたらろくでなしもいいところなのですから。」

 イサクは子のヤコブを呼び付け、祝福し、また諫めるつもりで言った。

「カナンの娘達のどれも妻に娶ってはならないぞ。起ってお母さんの父の家、ベトエルの家のあるメソポタミアに行き、あそこから、お母さんの兄弟のラバンの娘達に中から妻を娶るがよい。全能の神がお前を祝福され、お前を繁栄させ、増やしてくださるように。お前はもろもろの民の集団となれ。彼がわたしの父アブラハムに与えられた所の祝福を、お前とお前の後に続く子孫に賜り、お前の寄留している土地、および主がアブラハムに与えられた全ての土地をお前に嗣がしてくださるように。倅や、安心して行くがよい。」

 

 ヤコブはイサクに遣わされてヤコブの母リベカの兄弟で、シリア人ベトエルの子ラバンのいるメソポタミアに赴いた。

 

……第44ヨベルの第2年週の第1年に、ヤコブはハランに赴くべく誓いの泉を出、その年週の1月の朔日に山の中のルズ、すなわちべテルに達した。

その場所に辿り着いたのは夕刻で日も落ちていたので、彼はその日の旅を打ち切ってその夜は道路の西側へ曲がって、そこで一夜を明かすことにした。彼はその場所の石を一つ取って木の下に置いて眠った。

 彼はその晩夢を見た。するとどうであろう、地上にはしごが立てられていて、その先端は天に達し、見よ、主のみ使い達がそれを上り下りしており、主がその上に立っておられた。彼はヤコブに語りかけて言われた。「わたしがお前の父アブラハムの神、イサクの神なる主である。君が眠っているこの土地は君と君に続く子孫に与えよう。君の子孫は地の塵のようになり、西に東に、北に南に増え、もろもろの民の全ての土地は、君と君の子孫を通じて祝福されるであろう。見よ、私は君と共にあり、君が何処へ行こうとも君を守り、この土地に無事に君を連れ戻そう。わたしは、君に語ったことを全部果たすまでは君を離れない。」

 ヤコブはぐっすり眠ってから眼を覚まして言った。

「この所は間違いなく神のお宿に違いない。そして、これは天の門だ。」

 

 朝ヤコブは早起きし、枕にしていた例の石を取ってその場所に記念碑として立て、そのてっぺんに油を注ぎかけ、その場所の名を「べテル」と付けたが、元はその土地にちなんでルズという名だった。ヤコブは次のように言って主に願をかけた。

「もし主が私と共にいて下さり、今回の私の道中私を守り私が食べるパン、私が着る着物を賜り、私が無事父の家に戻れたら、主は私の神とし、この場所に記念碑として立てたこの石は、主のお宿とし、あなた様が私に賜った一切のものの10分の1を私の神たるあなた様に献げます。」

 

 

第28章

 

 彼は更に旅を続け、母の兄弟ラバンの居る東の国へ行った。彼は彼ラバンのところに逗留して、その娘ラケルを得るために1年週間彼に仕えた。

 第3年週の第1年に彼はラバンに言った。

「私がそのために7年間あなたに仕えた、私の妻を私にください。」

 ラバンはヤコブに言った。

「君の妻は君にやるよ。」

そこでラバンは宴を張り、長女のレアをとって妻としてヤコブにやり、自分の下女のジルバを女中として彼女にやった。ヤコブはそうとは知らず、これはラケルだと思い込んでいた。

 彼が彼女の寝室に入ってみるとどうであろう、それはレアではないか。ヤコブはラバンに腹を立て、言ってやった。

「どうしてこんなことをなさったのですか。私があなたにお仕えしたのはラケルのためではありませんでしたか。レアのためではありませんでした。どうしてこんな酷い仕打ちをなさったのですか。娘さんはお引き取り下さい。私は帰ります。こんな酷いことをなさるとは。」

ヤコブはレアよりラケルの方が好きだったのである。それはレアは目が悪かったからである。ただ彼女の器量は大変すばらしかった。一方ラケルは目も美しく、器量も大変すばらしく美しかった。ラバンはヤコブに言った。

「我々の国では年下の者を年上の者より先に嫁にやるということはしないのである。そういうことをしては、正しくないのである。……定められ、そう天の板に書かれているのだから。そういうことをする人は罪人として書き込まれる。……。」

 ラバンはまたヤコブに言った。

「ともかくこれ、レアの祝いの7日間が過ぎてからにしようではないか。そしたらラケルを君にやり、最初の1年週間やってくれたように、もう7年間私に仕え、羊の世話を見てくれたらよい。」

 

 レアの祝宴の7日間が終わった日、ラバンはヤコブにもう7年間仕えてもらう為にラケルをやった。彼はまたジルバの妹ビルハを下女としてラケルにやった。彼は更に7年間ラケルの為に仕えた。レアはただでもらったようなものだったからである。

 

 主はレアの胎を開かれ、彼女は身ごもってヤコブ男児を産んだ。第3年週の第1年、9月14日に彼はその名をルベンと付けた。しかしラケルの胎は閉ざされた。ラケルは寵愛を得ているのに、レアは疎んじられているのを主が見られたからである。

 ヤコブはまたレアの寝室に入り、彼女は身ごもってヤコブに次男を産んだ。この年週の第3年、10月21日に彼はその名をシメオンと付けた。ヤコブはまたレアの寝室に入り、彼女は身ごもってヤコブに3男を産んだ。その年週の第6年の1月朔日にその名をレビと付けた。またヤコブはレアの寝室に入り、彼女は身ごもって4男を産んだ。第4年週の第1年の3月15日に彼はその名をユダと名づけた。

 

 ラケルは自分に子が出来ないのでこの間中ずっとレアのことを嫉妬し続けた。彼女はヤコブに言った。

「私に子をください。」

 ヤコブは彼女に言った。

「俺のせいでお前の腹に子が宿らないとでもいうのか。俺がお前を棄てたというのかね。」

 ラケルはレアがルベン、シメオン、レビ、ユダと4人もの子をヤコブに産んでやったのを見て彼に言った。

「私の下女のビルハの寝室に入って下さい。そうすればあれが身ごもって私の子を産んでくれるかもしれません。」

彼女は下女のビルハを妻代わりに彼にやった。彼は彼女の寝室に入り、彼女は身ごもって彼に男児を産んだ。第3年週の第6年の6月9日に彼はその名をダンと付けた。またヤコブは下女ビルハの寝室に入り、彼女は身ごもって再びヤコブ男児を産んだ。第4年週の第2年の7月5日にラケルはその名をナフタリと付けた。

 

 レアは自分が不妊になって子が出来ないのを見てラケルを嫉妬し、彼女も下女のジルバを妻代わりにヤコブにやった。彼女は男児を産んだ。第4年週の第3年8月12日、レアはその名をガドと付けた。彼は再び彼女の寝室に入り、彼女は身ごもって彼に2番目の男児を産んだ。第4年週第5年の11月2日、レアは彼の名をアセルと付けた。ヤコブはレアの寝室に入り、彼女は身ごもってヤコブ男児を産んだ。第4年週の第4年の5月4日、彼女はその名をイッサカルと付けて、乳母に渡した。ヤコブは再び彼女の寝室に入り、彼女は身ごもって男女の二児を産み、第4年週の第6年7月7日、彼女は男児ゼブルン、女児の名をデナと付けた。

 

 主はラケルに慈悲を垂れ、彼女の胎を開かれた。彼女は身ごもって男児を産み、その第4年週の第6年の4月朔日、彼女はその名をヨセフと付けた。ヨセフが生まれた日に、ヤコブはラバンに言った。

「私の妻達と子供達を渡して下さい。父イサクの所へ戻って一家を構えたいのです。あなたの2人の娘の為の私のお勤め期間も終わりましたし、父の家に帰りたいと思います。」

 ラバンはヤコブに言った。

「ちゃんとお礼はするから私の所にいて、また私の家畜の世話をしてくれないか。礼は取ってくれ。」

 生まれた時、黒まだら、あるいは白の羊、山羊は報酬として彼に全部やる、これを彼の報酬とするということで彼等は互いに合意した。どの羊も、まだらのもの、印のある混色のものを産み、羊達はさらにまた自分と同じようなものを産んだ。

印のあるものはヤコブのもの、印のないものはラバンのものとなった。ヤコブの資産は非常に増え、彼は牛、羊、ろば、らくだ、男女の奴隷を得た。ラバンとその子らはヤコブを妬み、ラバンはその羊を取り戻し、彼に悪意の眼を向けた。

 

 

第29章

 

 ラケルがヨセフを産んだ時、ラバンは羊の毛を切りに行った。羊の居たところは彼の所から遠く、辿り着くのに3日間を要した。ヤコブは、ラバンが羊の毛を切りに行くのを見て、レアとラケルを呼び、自分についてカナンへ来るように説得した。

彼は夢で見たこと、父の家に戻るように、神が彼に語られたことを何もかも彼女等に語った。彼女等は彼に言った。

「あなたのいらっしゃるところ、何処へでも一緒にまいいります。」

ヤコブは父イサクの神、祖父アブラハムの神を褒め称え、起って妻子をろばに乗せ、財産を集め、川を渡ってギレアデの地に着いたが、ヤコブは心中密かにことを運び、ラバンに明かさなかった。

 

 第4年週の第7年、1月の21日、ヤコブはギレアデに向かった。その後を追跡したラバンは、3月13日、ギレアデ山中でヤコブに追いついた。主はヤコブに危害を加えることを彼に許されなかった。主は前夜ラバンに、夢で姿を現しておられた。そこでラバンはヤコブと話し合った。

 

……双方いずれも悪意をもってギレアデの山を越えないことをその日誓い合った。

彼はそこに証のために大きな塚を築いた。この故にその場所の名はこの塚にちなんで「証の塚」と呼ばれた。しかし、✤以前はギレアデの地のことをレパイムの地と呼んでいた。それはレパイムの土地であり、身長が10キュビト、9キュビト、8キュビト、7キュビトまであるレパイムという巨人がそこで生まれたからである。彼等の居住地は、アンモンの子らの地からヘルモン山までで、その統治の中心はカルナイム、アシタロテ、エデレイ、ミショル(平野)、およびベオンであった。主は彼等の行いの悪さ故に彼等を滅ぼされた。彼等は酷い悪党であった。彼等に代わって※アモリ人が住み着いたがこれも悪く、罪人であった。

 

 

 

 ……(略)

 

 

 

 

◆補足文(✤この文面は旧約聖書の中には出てこない文章です。(※アモリ人はパレスチナ先住民の総称と言われています。)しかし聖書中には、巨人について、そしてその子孫についての文章はところどころに出てきます。例えば、旧約聖書民数記13:30「私達が偵察のために行き巡ってきた土地は、そこに住もうとする者達を喰らい尽くしてしまう土地なのだ。あの土地の只中で私達が目撃した民は皆巨人だった。あそこで私達はネフィリムを目撃した。アナクの子らはネフィリムの一部なのだ。私達の目には、自分達がまるで蝗のように見えた。彼等の目にも私達がそう見えたに違いない。」とあります。 また申命記2:10「以前エミ人がそこに住んでいた。強くて数が多く、アナク人と同じように背が高い民であった。彼等もアナク人と同じく✽✽レファイムと考えられていた。」とあります。レファイムも、アナク人と同じ背が高い民であり、巨人の子孫であるとされています。ちなみに岩波書店旧約聖書Ⅲ・民数記申命記」の脚注によると、✽✽レファイムの意味は、先住民の間にいた伝説的な英雄や巨人、神秘的な力を帯び、宗教儀礼において威力を発揮した者達を指していた呼称であると思われているようです。つまり、その巨人達のやっていた宗教儀礼が、おそらくバアル信仰やアシュタロト女神信仰であると考えられるのです。)

 

 

……(略)