tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

聖書外典偽典(旧約偽典)『ヨベル書』5

旧約偽典『ヨベル書

 

 

第16章

 

 4月の朔日にわれわれはマレムの樫の木の所でアブラハムに姿を現して彼と語り、妻サラから男児が与えられるであろう旨を彼に伝えた。サラはわれわれがアブラハムにこう語ったのを聞いて笑った。われわれが諫めると怖くなったのか、そのことを笑ったことを否定した。われわれはその子の名を、天の板に定められ、書いてあるように、

イサクと告げた。定まった時に彼女の所に戻ってきた時には、彼女は男児を身ごもっているであろうとも告げた。

 

 この月に主はソドムとゴモラとゼボイムとヨルダンの全域に裁きを行い、これ火と硫黄で焼き払い全滅させられたが、それは今日に至っている。わたしが君に知らしめた通り、彼等の所行は甚だしく邪悪で罪深く、彼等は身を穢し、淫行を自分の肉体に行い、地上でいやらしいことをやっていた。主はまたソドムの穢れと同じようなことを行った全ての場所に対してソドムの裁きと同じ裁きを行われるであろう。

しかし、ロトは救い出すことにした。というのは、神がアブラハムのことを思い出して彼を破局の中から助け出されたからである。

 

 彼(※この場合はソドムとゴモラ達を指す)とその娘らは地上でアダムの時代から彼の時代までに無かったような罪を犯した。見よ、彼の全ての子孫について、彼等を除き、根絶やしにして、ソドムの裁きと同じ裁きを彼等に行い、審判の日にこの者の子孫が一人も地上に残っていないようにすることが命じられ、天の板に刻みこまれている。

 

……彼女は3月に男児を産んだが、その月の半ば、主がアブラハムに言われたところ、刈入れた初穂の祭りの時にイサクは生まれたのである。アブラハムは8日目にその息子に割礼をほどこしたが、彼は永久の者として定められた契約に従って割礼を受けた最初の者であった。

……(略)

 

 

第17章

 

 ……そのヨベルの第7年週の第1年の1月、その月の12日にアブラハムに関して天上で言葉が発せられ、彼は、主から言われること全てにおいて信頼するにたり、主は彼を愛しておられ、どんなに辛い時でも忠義を貫いた、ということであった。

 

 悪霊どもの頭領マステマがやって来て、神に向かって言った。「ご覧の通りアブラハムは息子イサクを可愛がり、何にもましてこれが気に入っているようです。あれにこれ、イサクを全焼の生贄として祭壇に供えるよう仰せられてはいかかですか。その命令を実行するかどうかご覧になれば、あれがあなたがお与えになるどんな試練にあっても信の厚い者かどうかがお分かりになるでしょう。」

 

 主は、どんなに辛い目にあってもアブラハムが忠信であったことを知っておられた。故国や飢饉で試されたこともあり、王達の富で試されたこともあり、また妻を奪って試されたり、割礼で、またイシュマエルと女中ハガルを追い出して試されたこともあった。どんな試練をあわせても忠信であることが分かった。気分を苛立たせることもなく、行動が鈍るでもなかった。忠信で主を愛していた。

 

 

第18章

 

 主は言われた。「アブラハムアブラハム。」彼は言った。「はい、主よ。」

彼、主は彼に言われた。「君の愛する子イサクを連れて高地に行き、わたしが君に指示する山の1つに上がるがよい。」彼は朝まだ暗いうちに起き出して、ろばに荷を負わせ、下男の中の2人と子のイサクを連れていくことにし、祭壇用の薪を割り、3日かかって当の場所に出掛け、その場所をはるか彼方に見た。水の泉の所まで来た時、彼等下男たちに言った。「ここでろばと待っているのだ。私と倅(せがれ)は行って拝んでくる。拝んだらお前達の所に戻ってくるからな。」彼は祭壇用の薪を取ってその子イサクの肩に負わせ、火種と小刀を手にもって2人揃ってその場所へ出掛けた。

 

 イサクは父に言った。「お父さん。」彼は言った。「ああ、おまえ。」

「火種と小刀と薪はここにありますが、生贄はどこにあるのですか。お父さん。」彼は言った。「生贄の羊のことは主が心配なさるはずだ、おまえ。」彼は主の山の場所に近づいた。彼は祭壇を築き、薪を祭壇の上に並べ、我が子イサクを縛って祭壇上に置き、我が子イサクを屠るために小刀をつかもうと手を伸ばした。

 

 わたしは彼と悪霊どもの頭領マステマの前に立ちはだかった。すると主は言われた。

「子に手をかけるな。またそれに何もするな。とあれに言いつけろ。あれが主を畏れかしこむ者であることがわたしには分かった。」

わたしは天から叫び、彼に言った。「アブラハムアブラハム。」彼はぎょっとして「はい。」と言った。わたしは彼に言った。「あの子に手を出すな。彼に何もしてはならない。君が主を畏れていることが今わたしに分かった。君は長男をすら惜しまずにわたしに差し出そうとした。」

悪霊どもの頭領マステマは面目を失った。アブラハムは行って雄羊を捕まえ、これを我が子の代わりに生贄として供えた。アブラハムはその場所を「主、見たまえり」と名づけた。かくして、その山で「主、見たまえり」と言うようになったのだが、これはシオンの山のことである。われわれが主の名によって彼と語るために姿を現した時、主はアブラハムを彼の名によって再び天から呼ばれた。彼は言われた。「わたしはわたし自身よって誓った。主は言われた、君がこうまでして、愛する長男すら惜しまず、私に差し出したからには、わたしは君を大いに祝福し、君の子孫を空の星、また浜の真砂のように大いに増やしてやろう。そしてきみの子孫はその敵の町々を嗣ぐであろう。君がわたしの声に従ったがゆえ、地の全ての民は君の子孫によって祝福を受けるでろう。わたしは、わたしが君に命じたすべてのことに関して、君がわたしに忠信であることを万人に知らしめた。安心して行くがよい。」

アブラハムは下男たちの所に戻って行った。