tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

聖書外典偽典(旧約偽典)『ヨベル書』10

旧約偽典『ヨベル書

 

 

第44章

 

 ……ヤコブはべテルで見た夢を思い出してエジプトへ下るのが恐くなった。彼は自分の所に来てくれるようにヨセフの所に行ってやり、自分では行かないようにしようかなどと考えながら、そこに7日間留まった。……16日に主は彼に姿を現して言われた。

 

 「ヤコブよ、ヤコブよ。」彼は「はい。」と言った。

彼は彼に言われた「ところでわたしはお前の先祖達、アブラハム、イサクの神である。エジプトへ下ることを怖がることはない。かしこにて君を大いなる民としよう。わたしが君と下って行こう。わたしがこの土地へ君を導き戻ろう。この土地に君は葬られることになろう。ヨセフが君の眼に手を置くであろう。怖がるな。エジプトへ下るがよい。」

彼はその子等、孫等と共に立ち上がり、彼等は父と家財道具を荷車に積み込んだ。かくてイスラエルはこの3月の16日に誓いの泉をたってエジプトへの地へ出掛けた。イスラエルは息子のユダを一足先にヨセフの所に行かせ、ゴセンの地の下検分をさせた。

ヨセフは、彼等がそこへ来て彼の身近に住むように兄弟達に言ったのであった。この地域は彼に近く、また彼等全て及び家畜にとってもエジプトの地の中では肥沃な所であった。

 

(略)

 

 

第45章

 

 第45ヨベルの第3年週の第2年の4月朔日に、イスラエルはエジプトのゴセンの地に入った。ヨセフは父ヤコブをゴセンの地に出迎えに来たが、彼は父の首をかき抱いて泣いた。

イスラエルはヨセフに言った。「今こうしてお前に会えたからもう死んでも良い。今こそイスラエルの神、その恵みと憐れみを僕ヤコブに拒まれなかったところのアブラハムの神、イサクの神なる主はほむべきかな。生きてお前の顔を見られたとはありがたいことだ。べテルで見た幻は本物だ。わが神、主はとこしなえにほむべきかな。その名はほむべきかな。」

ヨセフとその兄弟達は父の前でパンを食べ酒を飲んだが、ヨセフが自分の目の前で兄達と一緒に食べて飲んでいるのを見たヤコブの喜びは非常に大きかった。彼は自分を守り、また自分の12人の子を守って下さった万物の創造者を褒めたたえた。ヨセフは父と兄達に対する特典として、彼がパロから任されて統治しているところのゴセンの地とラメセス及びその周辺全域に住むことを彼等に許した。イスラエルとその子等はエジプトの地の特等地ゴセンの地に住んだ。イスラエルはエジプトの地に入った時130歳であった。

 

 ヨセフは父と兄達及びその家畜にも7年の飢饉の期間をしのげるだけの糧食を給した。エジプトの地は飢饉で苦しんだ。ヨセフは食糧と引き換えにエジプト全土をパロのものとして買い集め、人間も家畜もその他一切パロの財産にしてしまった。飢饉の年が終わるとヨセフは領内の者に、8年目に種子を撒くようにと種子と食糧を給した。エジプト全土にわたってナイル河は溢れていた。飢饉の7年間には河の周辺の数箇所しか水が被らなかったのだが、今や河は溢れ、エジプト人は土地に種を撒きつけ、その年には大量の穀物の収穫があった。これは第45ヨベルの第4年週の第1年であった。ヨセフは彼等が撒いたものの5分の1を王室用に召し上げ、5分の4を彼等の食料、種子として残し、ヨセフはこれをエジプトの地の定めとして今日に及んでいる。

 

 イスラエルはエジプトの地で17年間生き、彼が生きながらえた年数は合計3ヨベル、147年で、第45ヨベルの第5年週の第4年に死んだ。イスラエルは死ぬ前に自分の子等を祝福し、エジプトの地で彼等に臨むであろうことを何もかも彼等に告げ、また終わりの日に彼等の身に起きるであろうことを彼等に教えて彼等を祝福し、ヨセフにその土地を2区画与えた。そして彼は父祖達と共に眠り、カナンの地の2重の洞穴に、ヘブロンの地の2重の洞穴に自分の為に掘った墓に、父アブラハムの傍らに葬られた。彼は自分の蔵書と父祖の蔵書を全部レビに渡し、彼レビがそれを保管し、その子等のために新たにするようにしたが、それはそのまま今日に及んでいる。

 

 

第46章

 

 ヤコブの死後エジプトのイスラエルの子等は数を増し、大集団となり、彼等は皆心を一つにし、兄弟同士愛し合い、各人助け合った。10年週に渡って、ヨセフの在世中ずっと中傷者もおらず、悪しき者は一人も居なかった。ヨセフの在世中はずっと全エジプト人イスラエルの子等を敬った。ヨセフは享年110歳で死去した。彼は17年間カナンの地におり、10年間奉仕し、3年間獄屋にあり、80年間王の下にあってエジプト全土に君臨した。彼も彼の兄達も、その世代の者は皆死んだ。彼は死に先立って、イスラエルの子等に、エジプトの地を出る日には、彼の骨を携えていってくれるように遺言した。彼は自分の骨について彼等に誓わせたが、それはエジプト人が彼をもう一度墓から掘り出してカナンの地に埋葬してくれることはないと知っていたからである。

カナン王マカロンアッシリアの地に住んでいた時、エジプト王と谷で一戦交え、そこで彼を倒し、エジプト兵をエルモンの入口まで追ったことがあったからである。しかし彼カナン王はそれから先には侵入することが出来なかった。別な者、新しい者がエジプト王として即位しており、新エジプト王の方が強くて、彼はカナンの地へ引き返した。エジプトの門は閉ざされ、エジプトに入る者はなかった。

ヨセフは第46ヨベルの第6年週の第2年に死に、人々は彼をエジプトの地に葬り、彼の兄達も皆彼を追って死んだ。

 

 第47年ヨベルの第2年週のその第2年に、エジプト王はカナン王と戦うべき出陣したが、その時イスラエルの子等はヨセフの骨を除くヤコブの子等の骨をことごとく持ち出し、野に、山中にある2重の洞穴に埋めた。多数の者はエジプトに戻り、少数の者だけがヘブロン山中に残り、君の父アムラムは彼等と共に残った。

カナン王はエジプト王に勝ち、エジプト門を閉ざした。彼はイスラエルの子等を苦しめる為の悪事をもくろみ、エジプトの人々に言った。「見よ、イスラエルの子等の民は我々よりも数を増し加えた。これ以上増えないうちに彼等を上手く扱わなくてはならない。戦いが我々の身に迫り、彼等が敵の側に回って我々に向かって弓を引き、心も顔もカナンの地の方を向いている彼等のこと、そのまま我々の地を逃げ出さないうちに、彼等を労苦を持って苦しめてやろうではないか。」

 

 彼は彼等イスラエルの子等の上に現場監督を任じて労苦をもって彼等を苦しめ、命じてパロのために堅固な都市ピトムとラメセスを建てさせ、エジプトの都市の崩れ落ちていた全ての城壁、壁を再建させた。こうして彼等は強制労働をさせられたが、痛めつけられれば痛めつけられるほど彼等は益々増え加わっていった。エジプト人の人々は彼等を汚れた者にでも触るように忌み嫌った。

 

 

 

第47章

 

 第47ヨベルの第7年週の第7年に※君(モーセのこと)の父はカナンの地から来て、第47ヨベルの第4年週の第6年に君が生まれたのだが、これはイスラエルの子等にとっては苦難の時代であった。エジプト王パロは、生まれた子が男の子だったら皆ナイル河に投げ込め、という命令を彼等に発した。そのようにして7か月間投げ込み続けた時に君が生まれた。

君の母は3か月間君を隠しておいたが、そのことを誰かが密告した。彼女は君のために籠をこしらえ、それにピッチとアスファルトを縫って河辺の草の中に置いた。彼女は君を7日間入れておいたが、夜は君の母が君に乳を含ませ、日中は君の姉ミリヤムが君を鳥どもから護ってくれたのである。

 

 その頃パロの娘タルムテは河で水浴をしようと出かけて来たが、君の泣き声を聞きつけて、へブル女達に君を連れてくるように命じ、彼女等は君を彼女の所に連れて行った。彼女が君を取り出すと、君を不憫に思った。君の姉が「この赤児をお姫様のためにお世話し、乳をやるようなヘブル女を一人呼んでまいりましょう。」と言うと、

姫は言った。「行って来ておくれ。」彼女は君の母ヨケベデを呼びに行き、彼女はお給金をもらって君を養育した。

 

 その後君が長ずるに及んで、彼等は君をパロの屋敷に召し抱え、君はそこの子となり、君の父アムラムに字を教わり、3週間たった時、君の父は君を王宮に連れて行った。君が宮廷に出入りするようになって3年週間経った時、王宮の外に出た際、同胞のイスラエルの子等の一人を殴っているエジプト人を見てこれを殺し、砂の中に隠した。その翌日君は、イスラエルの子等のうちの2人が喧嘩をしている所に出くわし、悪い方に「どうして兄弟を殴るのだ。」と言ったところ、相手はむっとなってむくれ、「誰が君を我々の半官また審判者にしたのだ。昨日エジプト人を殺したみたいに俺も殺そうというつもりか。」と言い返した。これに君は怖くなって逃げた。

 

 

 

第48章

 

 第49ヨベルの第3年週の第6年に、君はそこを去って5年週と1年そこに住んだ。君は第50ヨベルの第2年週の第2年にエジプトに戻った。

彼が何をシナイ山で君に語られたか、また仮庵祭のおり、エジプトへの帰途、悪霊どものマステマが君に何をしようと欲していたか、君自身がよく承知している。君がエジプト人に裁きと復讐をするために遣わされたのであることを見破った時、彼は全力を挙げて君を殺し、君の手からエジプト人を救おうとしたのではなかったか。わたしは君を彼の手から助け出してやり、君はパロと彼の全家と召使たちとその民に対してエジプトで行うように遣わされた徴と不思議を行った。

 

 主はイスラエルのことで彼等に対して厳しい復讐をされ、彼等を打ちのめし、血と蛙とブヨと犬につくアブと膿の出る悪性の腫物で彼等を殺し、彼等の家畜は死んで、彼等のために生え出てくるものは何もかも雹で全滅させ、雹に耐えて残ったものを食い尽くした蝗(いなご)と暗黒で滅ぼし、人間と動物の長子及び彼等の全ての神々に主は復讐され、彼等を火で焼かれた。誰か他の人によって、なされる前に君がするように全ては君の手を通じて送られた。君はエジプト王に、彼の全ての廷臣と民の前で語った。何もかも君の言った通りになり、10の大いなる、厳しい裁きがエジプトの地にくだり、君はイスラエルの仇をうった。

 

 主は全てをイスラエルのために、またエジプト人が彼等を強制労働に就かせたことに対して彼等に復讐すると言って、アブラハムと取り決められた定めに従って行われたのである。頭領マステマは、君に対抗し、君を倒してパロの手に渡そうと望んでエジプトの魔術師達を助けた。彼等は君に対抗して彼等の手で講ぜられるのは彼等に許さなかった。主は悪性の潰瘍をもって彼等をうたれた。また、たった一つの徴もやれないようにわれわれが打ちのめしてやったので、君に対抗することは出来なった。これら全ての徴と不思議にもかかわらず、頭領マステマは恥もせず、戦車と馬に乗った全エジプト軍にその多数の兵を引き連れて君の後を追うよう、勇を鼓してエジプト人に呼びかけた。

 

 わたしはエジプト人を君の間に立ちはだかり、われわれはイスラエルを彼の手と彼の軍勢の手から救い出し、主は陸の上を導きだされるかのように彼等を海中を通って導き出された。イスラエルの後を追うようにして連れ出されたところの全ての軍隊を、われわれの神、主は、エジプトが彼等イスラエルの子等を河に投げ込んだと同じように、海の最中、淵の深み、イスラエルの子等の足の下に投げ込まれた。

 

 彼は100万人にイスラエルの仇を報いられた。彼等が河に投げ込んだ君の民の子等の中の乳呑み児一人につき血気盛んな強者1000人が滅びていった。

14日、15日、16日、17日及び18日目には、頭領マステマは、彼等イスラエルの子等を誹謗することのないように縛られて、イスラエルの子等の後ろに閉じ込められていた。19日目にわれわれは彼等がエジプト人を助け、イスラエルの子等を追撃するように彼等を解き放ってやった。

※彼は彼等の心を頑なにしたが、われわれの神、主はエジプト人を撃ち、彼等を海に投げ込むようにしきりと彼にけしかけられた。彼等イスラエルの子等がエジプト人に調度品と衣類、銀の調度、金の調度、青銅の調度を求め、強制労働につかせられたその労役の代わりとしてエジプト人のものを略奪しようという日に彼等イスラエルの子等を誹謗しないように、われわれは15日目に彼を縛った。われわれがイスラエルの子等をエジプトから導き出した時彼等は空手ではなかった。

 

 

 

 

 

◆補足文(実際の聖書の中では頭領マステマがエジプト側に立ち、イスラエルとそのイスラエルを守る神と戦った記述は勿論ありません。でも、この旧約聖書の「出エジプト記」の中の最大と言っていい、有名なクライマックスシーンにおいて、目に見えない霊的な空間においても、実は主と主に仕える天使達が悪魔と戦っていたのだという設定場面を差し入れているのは面白いなと思いますね。そして、ヨベル書での※彼は彼等の心を頑なにしたは、マステマを指しているみたいなのですが、旧約聖書の中では敵のエジプトのファラオの心を頑なにしたのは神、主です。ここも見解が違っていますね。)