tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

聖書外典偽典(旧約偽典)『ヨベル書』9

旧約偽典 『ヨベル書

 

 

 

第40章

 

 

 その頃パロは、全地におこるであろう飢饉について一晩のうちに2つの夢を見た。眠りから覚めた彼はエジプト内にいる夢解き全部と、魔術師を召し寄せて彼の2つの夢を話してやったが、彼等はその意味を彼に明かすことは出来なかった。

その時酌取りの長は、ヨセフのことを思い出し彼のことを王に話すと、王は彼を牢から引き出させ、彼の2つの夢を語った。 

 

 彼はパロに「2つの夢は帰するところ一つである。」と言った。彼はまた言った。

「エジプト全土に7年間豊作が続き、その後どこの土地でも前代未の飢饉が7年間続くでありましょう。そこで、パロにおかれましてはエジプト全土に監督官を任命せられ、豊作の年に各都市に食糧を蓄えて不作の7年間の食糧として、飢饉のおかげで領地がだめになることのないようにしていただきます。この飢饉はそうとう厳しいものになりそうですから。」

 

 主はパロの前に立つヨセフに恵みと憐れみを施され、パロはその廷臣達に言った。

「この者ほど賢明で聡いものは見当たるまい。主の霊が彼の上に宿っておるのだ。」

 

 パロは彼を王国全体の上に立てて自分の片腕とし、全エジプトを彼の権限下に置き、パロのすぐ後ろの第2の馬車に乗ることを許した。また亜麻布の衣装を着せ、金の鎖を首にかけさせ、先ぶれの者に「エル・エル・ワアビレル」と呼ばわらせ、指輪をその手にはめてやり、全王宮の管理を任せ、「朕がそちより偉いと言っても王座だけの違いじゃ。」と言って彼をほめそやした。かくてヨセフはエジプト全土を治めたが、パロの全ての役人、廷臣、また王の職務に携わる全ての者から好かれた。というのは彼が正直のうちに歩み、威張らず、おごらず、えこひいきをせず、袖の下を受け付けず、全領民を公正に扱ったからである。

 

 ヨセフのお陰でエジプトの地は泰平であった。主がヨセフと共にいまして、彼の将来の子孫に至るまで、彼と折り合いになり、彼の噂を聞いた者の前で、彼に恵みと憐れみを賜り、パロの王国には善政治が敷かれ、サタンや悪の付けこむ隙間はなかった。

王はヨセフの名をセファンテファンスとし、ポテパルの娘、ヘリオポリスの祭司で厨房の頭の娘をヨセフに妻(めあ)わせた。ヨセフはパロの所に召し抱えられた時30歳であった。その年イサクは死んだ。

 

 ヨセフが彼、パロの2つの夢の解釈で宣言した通り、彼が語った通りになった。

即ち、7年間豊作が続き、エジプトの地の収穫は大いに上がり、1計りの種で1800計りの収穫があった。ヨセフは各都市に食糧を貯え、ついには穀物が倉に満ちて、多くて数えることも計ることも出来ない位になった。

 

 

 

第41章(省略)

 

 

 

第42章

 

 第45ヨベルの第3年週第1年に飢饉がはじまり、雨は地に与えられなくなり、全然降らなくなった。地は不毛となった。エジプトの地だけは食糧があった。彼等民は食糧を供すべくヨセフが貯蔵させておいたからであり、彼は豊作の7年間の地の種子をも集めて保存しておいた。エジプト人等はヨセフの所にきて食糧を求めた。彼は第1年の穀物が置いてある倉を開いて領民に金と引き換えに売った。

 

 ヤコブはエジプトの地に食糧があると聞いて、買い出しに彼の子10人を送ったが、ベニヤミンはやらなかった。彼等は同行の者達と一緒にかの地に着いた。ヨセフは彼等に気づいたが、彼等の方では彼に気づかなった。彼は彼等に語り掛け、色々尋問し、「お前達は間諜ではないのか。土地の様子を探りに来たのだろう。」と言って彼等を捕縛した。それからまた彼等を釈放してやった。ただし、シメオンだけは引き留めておき、9人の兄弟は放してやった。

 

 彼は彼等の袋に穀物で満たしてやり、彼等の金もその袋に入れておいたのだが彼等は気づかなかった。彼は末弟を連れてくるように彼等に命じた。父がまだ元気でおり、下に弟がいることを彼等は彼に話したのである。彼等はエジプトの地から帰国の途に着き、カナンの地に着いてから、自分達の身に起こった一切のこと、彼地の領主が彼等にどういう無理な話をもちかけ、ベニヤミンを連れてくるまで預かると言ってシメオンを捕らえたかを父に報告した。

 

 ヤコブは言った。

「お前達はわしの子を次々と奪っていく。ヨセフはいない。シメオンもいない。ベニヤミンも取り上げようというのだ。お前達がとんでもない事をしでかしたおかげだ。」

彼はまた言った。「倅はお前達については行かせない。病気にでもなられては困る。母さんは2人の男子を産んだが、そのうちの一人はもういなくなってしまった。……。」

 

 彼等は彼等の金がそっくりそのまま財布に戻されていたのを見、そのために彼をやることを恐れたのである。カナンの地及び全ての地に飢饉は頻発し、厳しさを増した。

……イスラエルは土地の飢饉が甚だ厳しく、助かりそうもないのを見てとって、息子たちに、「また行って、食糧を仕入れてきておくれ。死んでなるものか。」と言った。

彼等は言った。「参りません。末弟が同行してくれるのでなければ参りません。」

イスラエルは彼をやらなかったら飢饉で全員滅びることを悟った。

ルベンが言った。「彼を私の手に任せて下さい。もしも私があれをお父さんの所に連れ戻さなかったら、あれの命の代わりに私の2人の息子を殺して下さい。」

 

……彼はその年週の第2年の朔日に彼を彼等と一緒に送り出した。彼等は他の同行者たちと共にエジプトの地に着いたが、没薬、アーモンド、テレビンの実、純粋な蜜などを手土産として持参していた。彼等は到着するとヨセフの前に立った。

ヨセフは弟のベニヤミンを見てそれと気づき、「これが末弟か。」と彼等に言った。彼等は「そうです。」と彼に言った。彼はまた言った。「子よ、主がお前に慈悲を垂れたまわんことを。」彼はベニヤミンを自分の屋敷へやり、シメオンを牢から出してやり、一同の為に一席設けた。

 

……ヨセフは一計を案じて、彼等の意中を探り、彼等の意図が友好的なものかどうかを知ろうと思って、彼の家の管理にあたっている執事に言いつけた。「彼等の袋に食糧を一杯詰めてやり、彼等の金も持ち物の間に挟んで返してやり、私が酒を飲むのに使う盃、あの銀の盃を末子の袋に入れてやり、皆を見送るがよい。」

 

 

 

第43章

 

 

……(略) 

 

「とんでもないことをしたではないか。」彼等は彼に言った。

「何と申し開きをいたしましょう。閣下は僕どもの咎を見つけられました。私共は閣下の僕、私共のろばも閣下の物とお考え下さい。」ヨセフは彼等に言った。「私は主を畏れる者である。お前達は帰国してよい。末の弟は、お前達が悪事を働いた罰だ。私の奴隷とする。誰にだって自分の盃には愛着があるものだということが分からないのか。私だってそうだし、この盃は私の愛着の物なのに、それを盗んで行きおった。」

そこでユダが言った。「はばかりながら、一言だけ私めに申し述べさせていただきたいのです。手前どもの父と母との間に2人の兄弟、男児を設けました。1人は家を出ていなくなり未だに行方が知れません。ですから母の子としてはこの子だけが残っておるのです。手前どもの父はあれをそれは可愛がっておりまして、父の命はこれの命と切っても切れないほどの絆で結ばれております。もしも手前どもの父の所に戻った時、この子が一緒に行かなかったら父は死ぬでしょう。悲嘆にくれながら枯れるようにして死んでゆくことでしょう。この子の代わりに私を奴隷として、閣下の奴隷として残らせていただき、この子は兄弟達と帰らせていただきたいのです。実は、もしもあれを連れて戻らなかったら、私は一生手前どもの父に対して罪を被ろうと言って、手前どもの父に受け合ってきているのです。」

 

 ヨセフは彼等が互いに和合し、善意の人々であると見てとり、これ以上こらえ切れなくなって、自分がヨセフであることを彼等に明かした。彼は彼等にへブル語で話しかけ、彼等の首をかき抱いて泣いた。彼等は彼が誰なのかも分からず、泣きだした。

彼は彼等に言った。「私のことで泣くのはよして、急いで父を私の所に連れて来て下さい。死ぬ前に父に会いたい。弟ベニヤミンの目が見ている所で。今年で飢饉は2年目ですが、まだ5年は収穫するものはなく、木に実はならず、耕すこともしないでしょう。兄さん達は一家揃って急いで来て下さい。そうすれば飢饉で滅びることもなく、財産のことを心配しなくてもよいでしょう。主が兄さん達より先に私を遣わして、多数の人が助かるように整えさせてくださったのです。私はまだ生きているむね、父に知らせて下さい。お兄さん方ご覧の通り主は、私がパロの父ともいうべきものとなり、彼の王室及びエジプト全土を治めるように定められたのです。私がどんなに出世し、主がどんなに私に富と栄誉を授けて下さっているかを父に伝えて下さい。」

 

 彼はパロの指示に従って彼等に馬車と糧食を給し、彼等全部に多色染めの衣装と銀を渡した。パロは彼等の父にといって衣装と銀と穀物を背負った、10頭のロバを付けて彼等を送り出した。彼等はのぼって行き、ヨセフが生きていて、かの地に全ての民に穀物を配給してやっており、またエジプト全土を治めていることを父に伝えた。

父は彼等の話を信じようとしなかった。気がすっかり動転していたのである。しかし、ヨセフが送ってよこした馬車を見るにおよんで、正気に返り、「ヨセフがまだ生きていてくれたとはありがたいことよ。死ぬ前に下って行って、あれに一目会いたいものだ。」と言った。