【マルコによる福音書】
※ごめんなさい。(>_<)
今回は「マルコによる福音書 ２.」のみです。
次回に「マタイによる福音書 ２.」を載せますね。
２．
中楓患者の癒しと論争
さて、彼が再びカファルナウムにやって来て幾日かすると、彼が家にいるということが知れ渡った。すると大勢の人が集まり、そのために戸口のところは、もはや全く隙間がなくなってしまった。そこで彼は、彼等に御言葉を語り始めた。
すると、人々が彼のもとに一人の中楓患者を運んで来る。
4人の者が担いで来たのである。そして彼等は、群衆のために、彼のもとに病人を運んで来ることが出来なかったので、イエスがいるあたりの屋根を剥いで穴をくり抜き、中楓患者の横になっている担架を降ろす。
するとイエスは彼等の信仰を見て、中楓の者に言う。
「子よ、あなたの罪はこれで赦される。」
ところが、そこに律法学者達のうちの幾人かが座っていて、
自らの心の中で思いめぐらしていた。
「なぜ、こいつはこのようなことを語るのか。こいつは神を冒涜している。
神お一人の他に一体誰が罪を赦すことが出来ようか。」
するとイエスは、彼等がこのように思いめぐらしているのをすぐにその霊によって知り、彼等に言う。
「なぜお前達は自分の心の中でそのようなことを思いめぐらしているのか。
中楓の者に『あなたの罪はこれで赦される』と言うのと、
『起きよ、そしてあなたの寝床を担げ、そして歩きまわれ。』と言うのと、
どちらがたやすいか。
しかし、人の子が地上において罪を赦す権能を持つことを、
お前達が承服するために。」
彼は中楓の者に言う。
「わたしはあなたに言う。
起きなさい、あなたの寝床を担ぎなさい。
そしてあなたの家に行きなさい。」
すると彼は起き上がり、直ぐに寝床を担いで、皆の前から出て行った。
そこで皆の者は正気を失うほど驚き、神を賛美して言った。
「こんなことは、俺達は今まで見たこともなかった。」
レビの召命
さて、彼は再び海に沿って出かけて行った。
すると全ての群衆が、彼のもとに来始めた。そこで彼は、彼等に教え続けた。
また彼は、通りすがりにアルファイオスの子レビが収税所に座っているのを見た。
そして彼に言う。
「わたしに従って来なさい。」
すると彼は立ち上がって、イエスに従った。
徴税人達との食事に関する論争
さて、彼の家でイエスが食事の座に横になる。
すると、多くの徴税人や罪人が、イエスやその弟子達と一緒の席で横になった。
彼の後に従っていたそのような者達は、実に大勢いたのである。
するとファリサイ派の律法学者等が、彼が罪人や徴税人と食事しているのを見て、
彼の弟子達に言い始めた。
「なぜ彼は、※①徴税人どもや罪人等と食事などをするのか。」
そこでイエスはこれを聞いて彼等に言う。
「丈夫な者に医者はいらない。いるのは病んでいる者だ。
わたしは『義人』どもを呼ぶためではなく、『罪人』達を呼ぶために来たのだ。」
断食に関する論争
さて、ヨハネ（洗礼者ヨハネ）の弟子達とファリサイ人達が断食をしていた。
そこで人々がやって来て彼に言う。
「なぜヨハネの弟子達とファリサイ派の弟子達が断食しているのに、
あなたに従っている弟子達は断食しないのか。」
そこでイエスは彼等に言った。
「※②新婚の部屋の子等は、花婿がそこに共にいるのに断食できるだろうか。
花婿が共にいる間は、断食できるはずがない。
しかし、花婿が彼等から奪い去られる日々が来るだろう。
そのときこそ、その日こそ、彼等は断食するだろう。
誰も、※③晒していない布の当て切れを古い着物の上に縫い付けはしない。
そんなことをすれば、新しい当て布は古い着物そのものから裂けて取れ、
破れはいっそうひどくなるだろう。
また、誰も※④新しい葡萄酒を古い革袋に入れない。
そんなことをすれば、葡萄酒は革袋を裂き破るだろうし、
葡萄酒も革袋も駄目になってしまう。
そうではなく、新しい葡萄酒は新しい革袋に入れるものだ。」
安息日と人の子
さて、彼は※④安息日に麦畑を通っていた。
すると彼の弟子達は、穂を摘みながら進み始めた。
そこでファリサイ人達が、彼に言いだした。
「見ろ、彼等はなぜ安息日に許されていないことをするのか。」
そこで彼は彼等に言う。
「お前達は、ダビデが、彼自身もまた彼と共にいた者達も
困り果てて飢えた時何をしたのか、まったく読んだことがないのか。
つまり、彼は大祭司※⑤アビアタルの時代に神の家に入り、
※⑥祭司達の他は誰にも食べることが許されていない供えのパンを食べ、
また一緒にいる者達にも与えたのだ。」
そして彼等に言った。
「安息日は人間のためにできたのであって、
人間が安息日のためにできたのではない。
だから、人の子は安息日の主でもあるのだ。」
❖補足文
（※①徴税人どもや罪人等と共に食事などをするのか。…律法厳守を掟とする人々には、「罪人」との共食は厳禁されていた。
※②新郎の部屋の子等は～断食できるはずがない。…婚礼に招かれた客の意。婚礼は当時、圧倒的な歓喜の時であった。「新郎の部屋」は「新婚の部屋」の意味。
※③晒していない布の当て切れ～ひどくなるだろう。…晒していない布が後日水で洗われると、縮んでしまうので。
※④新しい葡萄酒を…駄目になってしまう。…「新しい酒」とは未発達の酒。それが発酵すると古い革袋を侵食する。
※⑤安息日に麦畑を～穂を摘みながら…麦の穂を摘むことが、律法には許されていない安息日の労働であるとの意。
※⑤アビアタル…正確には「アヒメレク」。マルコの記憶違いか。
※⑥祭司達の他は～供えのパンを食べ…＜レビ記２４：５－９＞参照。
＜レビ記２４：５－９＞
供えのケーキ
あなたはまた、上質の小麦粉を取り、それで１２のケーキを焼きなさい。
そのケーキの分量は、一つの当たり１０分の２エファ（約４．６リットル）とする。
そしてあなたは、それらを一列に６つずつ、２列にして、ヤハウェの前の純金の卓上の上に並べなさい。
あなたはまた、ケーキのそれぞれの列のそばに、純粋な乳香を添えなさい。
それはパンのための覚えの分、ヤハウェへの火に焚く供物となる。
（※※すなわちパンを神に献げたことの象徴として乳香だけが焼かれ、
パンそのものは後に祭司のものとなる。）
それは、アロンとその子等のものになる。
彼等はそれを聖域で食べねばならない。
なぜなら、それは、彼にとって、
ヤハウェに属する火に焚く供物から取られた最も聖なるものだからである。
これは、永遠に定められた分け前である。
となっています。
この意味から後にイエスが言った「安息日は人間のためにできたのであって、人間が安息日のためにできたのではない。人の子は安息日の主でもあるのだ。」をかみしめてみましょう。）
✤✤更に安息日についての深堀
本文の解説書には次のように説明されています。
ユダヤ教において、１週間のうち安息に捧げられた一日、ユダヤ式には金曜日の日没から土曜日の日没までを指す。
元来は、人間や家畜を過重労働させないための配慮から生じた規定であるが、
＜出エジプト２３：１２＞
いわゆるバビロン捕囚期（紀元前６世紀）以降、ユダヤ人のアイデンティティ確認のための手段となって聖化され＜エゼキエル２０：１２．２０＞、
違反して労働した者は死をもって脅かされるようになった。
＜出エジプト３１：１３－１７，３５：２＞
紀元後１世紀頃は、とりわけファリサイ派やエッセネ派の間で、何が安息日に許されない行為であるか、微に入り細に渡った規定があった。
✤以下に＜出エジプト＞を参照。
＜出エジプト２３：１２＞
６日間、あなたは自分の仕事をし、７日目には休みなさい。
あなたの牛やロバが休息し、あなたの女奴隷やの息子や寄留者が一息つくためである。
＜出エジプト３１：１２－１３＞
「あなたはイスラエルの子等に、次のように告げて言いなさい。
『心して、あなた達は私の安息日を守りなさい。』
なぜなら、それはわたしとあなた達の間での代々にわたる徴であり、
わたしヤハウェがあなたを聖別する者であることを知らしめるものだからである。』
＜３１：１６ー１７＞
この安息日を永遠の契約としなさい。
それは、永遠にわたしとイスラエルの子等の間での徴である。
なぜなら、かつてヤハウェが６日間で天と地を創り、
７日目には安息をとり、一息つかれたからである。
＜出エジプト３５：２ー３＞
すなわち、６日間は仕事がなされるべきである。
しかし７日目は、あなた達にとって聖なるものであり、
この日に仕事をする者があれば誰であれ、殺されねばならない。
安息日には、あなた達が住むどの場所においてであれ、
あなた達は決して火を灯してはならない。
✤この解説と＜出エジプト＞からも分かる通り、ヤハウェがこの安息日を非常に大切にされているのは間違いありません。
しかし、ファリサイ人に対して、イエスはそれを全否定しているのではなく、例外もあるということ。それをダビデのしたことを例に挙げ、また自分が神の子であり、神の掟においての権能をもっているということも示していました。
