tekuteku-tekutekuの日記

聖書研究と陰謀論

魔術 11,

【魔術】

 

 

 『ピカトリクス』

  第Ⅲ書

 

 第10章

 諸惑星の霊の効果を調合物に込め、またその作用の損ないを祓う方法。

降霊術の奇瑞について惑星の霊への実修に用いる食物、薫香、塗布剤、香について。

そして惑星の効果また目に見えない作用について。

 

 

 1,

  アリストテレスアレクサンドロスのために編んだ前掲書『デ・エステメクィス』で、諸霊の潜在力と驚くべき効果をもつ4つの石の調整法について述べている。

 

 その第一はラユェタンスと呼ばれ、この石を指輪に嵌め込んで身に着けてると、霊をもつものなら人でも動物でも従順に服する。

またこの石でいずれかの紙片に封印を捺し、これを王あるいは誰かに送るなら、これを見た者はたちまち震え上がりこれに従い、必ず請願を叶えてくれるという。

逆らう人に同じことをなすなら上述した通りになる。

この石は緋色で、その調整法は以下の通り。

 

 紅玉(ルビー)を2オンス、汚れを取り去り、半ドラクマの金剛石、砕いた鉛とマグネシアをそれぞれ半ドラクマ、硫黄半オンス、黄金2オンスを混ぜる。これらを一纏(まと)めして坩堝(るつぼ)に入れ、弱火にかける。

徐々に火を強めて、これらを融かす。紅玉の力能が金剛石を、金剛石の力能がマグネシアを、マグネシアの力能が硫黄を融かし、また黄金がこれら全てによって融かされるように。

これらがよく混ざったら、坩堝を火から降ろして冷やす。すると混合物全体が濁った色の一塊になる。

 

 ここで獅子の脳、豹の脂、狼の血を等量容易し、まず脂を溶かす。そしてこれに脳を混ぜ、そこに血を投入すると、その色は斑になる。

手でこれに触れたり、衣服に付けたり、その匂いを嗅いだりせぬように十分注意する。

これは個々の形相のあらゆる性質にとって致命的な毒であり、ケトラティスが眠っているうちに使用されたものだという。

 

 これが鎮まったら、場所を移し、別に、黄アゼルネク、黄硫黄、赤硫黄それぞれ10オンスを洗って粉砕し、これを先の毒に投じる。するとたちまちその毒は砕かれ、全て液化する。これら液化したものと塊になったものを壺か小さな器に入れ、アウリファブロ土で覆い、弱火にかける。全て液化し蠟のようになったなら、壺を火から取り去り、冷えるのを待つ。

 

 続いて先の塊を液化する。霊が少しずつ合体し、ついにはそれと一体になる。

そこで火から外して冷えるのを待つ。この小石を轆轤(ろくろ)で適当な大きさに円く磨き上げる。

 

 アリストテレスはアレキサンドロスに次のように語っている。

「アレキサンドロスよ、これがあらゆるものを凌駕する驚異の物体である。」と。

 

 

◆補足文

(※アリストテレスは、古代ギリシャの哲学者であり、プラトンの弟子でもありました。西洋最大の哲学者の一人とも言われています。ウイキペディアや学校で習うアリストテレスは偉大な哲学者なだけでなく、様々な学問の神様的存在として紹介されていますが、「魔法学」としての業績については教えられていません。しかし、この『ピカトリクス』の中で彼が登場したということは、そういう分野も長けていたということですよね。彼の多くの著作の中には『自然論』『天体論』『霊魂論』『夢占いについて』がありますし、そもそも、プラトン悪魔学研究者達のエピソードの中では常連です。)

 

 

 2,3,

(省略)

 

 

 4,

 第4はハンデモトゥス石と呼ばれる。これについてアリストテレスは、この石は婦女の愛を避けるに適したもの、と言っている。つまり兵士達、軍人達が交戦しなければならない時に、婦女と交わっているとその体は消耗し、結果容易に敗北を喫することになるから。この石は白色で、その成分は以下の通り。

 

 鉛10オンス、白硫黄で液化した銅と鉄それぞれ1オンス、銀を半オンス用意する。銅、鉄、銀を液化して一体とし、この上に鉛を投じる。

全てが均一に混ざったなら、マグネシア石、金剛石、黄硫黄をそれぞれ半オンス、赤アゼルネクを2オンス用意し、これら全てを粉にしたものを溶融物の上に投じる。全てが融け込んだなら、火から取り上げ、保存する。続いて以下のように霊をつくる。

 

 ガゼルの脂と馬の脳を等量用意し、脂を溶かしてこれに脳あるいは髄を混ぜ、そこに雀の血を加えて◯化させる。ここで豚の骨1オンス、ホウ砂とマグネシアを半オンス、黄硫黄1オンス、赤アゼルネク半オンスを粉砕して、均一になるまで混ぜ、先の髄と脂を投じる。

これを火にかけ、全て液化させる。そして火から取り上げ、冷めるのを待つ。これが冷めたら、最初につくった塊を取り出し、これを火にかけて融かす。

この上に上述した媒介剤を徐々に投じ、全てそこに含浸させ、滑らかにする。そこでこれを火から取り上げ、冷めるのを待つ。この石を轆轤で同じ大きさの球にする。そして先述した祈祷詞と共に3日間作業を続ける。

 

 続いて銅で2つの像をつくる。一方は男の形相、他方は女の形相に。この男の像の方に石を載せ、2つの像を背中合わせに置く。

鉄釘をとり、先述した祈祷詞を3度唱える。ここで女の像の胸にそれを打ち込み、その像の背中まで貫通させる。これに男の像を押し付けて、2つの像がお互いにしっかり繋がるようにする。

これらの像を鉄の函に納めて密封し、これに一昼夜先述した祈祷詞を唱え続ける。

これをあなたの身に着けるなら、あなたまたあなたの同輩や兵士達は婦女への情欲から完全に遠ざけられる。

 

 

 5,

 以上、アリストテレスが先述した『アステメクィスの書』で語るところ。

上述した石の混合物は致命的な毒であり、触れたり臭いをかいだりすることに十分注意して慎重になされねばならない。そうした危惧なしに作業を進めるための解毒剤があり、これは以下のように調合する。

 

 アロエ樹、ギンバイカの種子、マンドラゴラの種子、アルペンの種子をそれぞれ2オンス、ナツメグ半オンス、セイヨウニンジンボク、汚れを取った雀、白白檀をそれぞれ1オンスとり、全てを混ぜて粉にし、ここにギンバイカの汁を混ぜて錠剤にし、乾かす。

 

 先述した致命的な毒である石を調合するにあたり、この錠剤を鼻孔、耳の中および口に入れ、上述した粉砕をその他の実修にあたり顔を布で覆う。また、手を守るための別の解毒剤も必要となる。それは以下のように調える。

 

 月桂樹の種子、バジリコの種子の仁核を等量、バルサム、兎の血をそれぞれ先の4倍量、十分汚れを取って、バルサムと兎の血と共に混ぜる。

上述の実修全てにわたり、あなたはこの解毒剤を準備しておき、先述した作業に当たりこれで手を洗う。そうすれば実修に危険はない。

 

 

 6,

  また、アリストテレスは前掲書で、

「上述したところを実修する者の霊はその自然本性に損傷をきたすことがある。」

と言っている。

こうした病患を免れ、その自然本性をそれに相応しい性質に還すには、下記の解毒剤を飲ませる。

 

 人の血を半オンス、扁桃の脂4オンス、兎の髄あるいは脳2オンスと混ぜ、ここに驢馬(ろば)の尿を1オンス加えてよく混ぜる。これを患者の空腹の胃に毎日1服ずつ飲ませ続ける。そうすればこの解毒剤は患者を治癒し、その自然本性に還してくれ、彼の中に留まっていた7惑星の邪悪な諸霊は彼から離れ、彼本来の自然本性である体液気質が賦活(ふかつ)するだろう。

 

 

 7,8,

 (省略)

 

 

 9,

  同じ目的で食べ物として与える物の別の調合法。

兎の凝血と狼の脳をそれぞれ2オンス、羊の脂液を麦粒3つ分の重量、龍涎香ナツメグを2粒分、樟脳(しょうのう)を3粒分、実修者の血を2オンス用意する。この血を鉄の器に入れて火にかけ熱する。

これが熱くなったら、その上に諸他の媒介剤を投じてよく混ぜる。そして火から取り去り、葡萄酒あるいは蜂蜜、それとも肉料理か鳥料理あるいは何か料理に混ぜる。

これを為す間、これによって上述したように為したいと思う婦女のことをしっかりと念じる。

 

 続いて僅かばかりの抹香と多量の楓子香を火に投じる。そしてこの煙が立ち昇るうちに、以下のように唱える。

 

 「ユェ、デユルス、メニュデス、カトルディス、メブドゥリス、フエネヘニレス、某婦女N の霊と想いを動かせ。これら霊達とこれらを為す力能によって。その婦女の霊と想いが寝ても覚めても、居ても立っても居られないほど焦燥に駆られるように。

ここに呼ぶ霊達に服するまでは決して平安が得られぬように。フエへユリュエス、ヘュェディス、カイムス、ヘンデリス。」と。

 

 このように祈りを唱え、あなたが欲する婦女にそれを残さず食事に混ぜて全てを与える。先述した媒介剤が食事した婦女の胃の中にある間、平静で居られず、激しく動揺し、何処で成りと汝に服従するようになる。

 

 これを飲食物に混ぜて婦女に与えることがどうしてもできない場合には、これより段階の高い調合物を作る。つまり上述した血の代わりに、業を向ける婦女の血を加える。そしてこれを他の全てと混ぜ、飲食物に混ぜて、その壺の中にあなたの手を入れる。

ここで抹香と楓子香をそれぞれ2オンス薫香として焚く。この煙が立ち昇るうちに、以下のように唱える。

 

 「アデュエルス、メタユルス、ベリュデス、ファルダルス。某婦女の霊と想いを某男へと動かせ。その婦女の諸霊とその思いと心の全てを動かし、寝ても覚めても、話す時も座す時も外出する時も、某に屈服してその欲望を叶えるまでは決して平安で居られなくさせよ。

そしてその霊の心を捕え、それを某男へと動かせ。その霊の力能によって、ヴェメデュス、アウドゥレス、メユルネユス、サンダルス。」と。

 

 そしてこれを業を依頼してきた男に食べさせる。これを食べた後、食べ物がその男の胃の中にある間、その手に抹香と楓子香を2オンス取らせ、これを火に投じて薫香とする。そしてこの煙が立ち昇る間に、次の名を唱えさせる。

 

「ハムレス、ヘユドゥレヒス、ヘルデミス、ヘルメニス。」と。

そしてこれに続けてこう唱えさせる。

「これがここに実修を試みる者の想いに引き寄せられるように。」と。

 

するとあなたの想いと依頼を叶えるために、大いなる愛情と服従の念とともにその婦女があなたの元にやって来るだろう。

 

 また、この賢者は言っている。その婦女の血を得ることが出来ない場合には、狼と羊の血をそれぞれ2オンスずつ取り、上述したように鉄の器に入れて火の上で混ぜる。

その上に兎の髄を2グラム、狼の髄を3グラム、羊の脂を4グラム投じ、全てを液化しよく混ぜる。

 

 樟脳、兎の凝血をそれぞれ2グラムずつ加えて全てを液化し、よく混ぜて火から取り去る。そしてこの混合物を飲食物に混ぜて与える。……(略)

 

 婦女の霊は、この業の実修によりその自然本性をこの男に向け、大いなる愛情に動かされ、この男を求めるようになる。そしてこの男に慎み深く心を寄せることな無くしてはどうしても平静を得られなくなる。

 

 

 10,

 (省略)

 

 

 11,

  同じ目的に供するための別の香料。

兎の凝血を2グラム、山羊の肝臓を1つ、抹香粉の上に置き、火にかけてそこから水が全て抜け出るまで熱する。

これを頑丈な鉄の器に入れて小刀で何カ所か突き刺し、そこから出る水全て壺に集め、この水を硝子の器に採って保存する。

 

 先述した業を実修するにあたり、その水を2グラム、ナツメグを3グラム、龍延香を4グラム取り、これら全てを鉄の器に入れて炭火にかけ、溶かして十分に混ぜる。

そしてこれを火から下ろし、硝子の器に移す、これを用いるにあたり、繊細清浄な油を1オンス鉄の器に取り、火にかける。そこの硝子の器の調合物を1グラム加えて一緒に液化し、均一になるまでよく混ぜる。

これが出来たら、抹香と楓子香をそれぞれ2オンス、それ、依頼者の男に薫香として焚く。この煙が立ち昇るうちに、以下のように唱える。…(略)

 

 唱えたなら、先述した油をこの実修の宛人である婦女に塗る。それが出来なければ、彼女が臭いを嗅ぎそうな良い香りのする何かに入れて、これの臭いを嗅がせる。

これを擦り込むか臭いを嗅ぐかするとたちまちその霊と想いは強く動かされ、先述した依頼者に対して大きな愛情と欲望が起き、この婦女はこの業に屈して従わぬ限り、寝ても覚めても休んでいても平静で居られなくなる。…(略)

 

 

 12,

(省略)

 

 

 13,

  以上、ここに述べた4つの像と調合はデカユトゥスと名づけられるもの、とは賢者カユネスが男と女を結ぶ方法で語っているところである。

 

 

 14,

 王の寵愛を得る処方。

王の寵愛と民への厚情を得たい時には、未だ何にも用いたことのない新しい蜜蝋を準備し、上述したところに準じ、これでその王の名の像を作る。

 

 続いてガゼルの脳を半オンス、兎の脳を1オンス、人の血を2オンス、鉄の器の中で一緒にし、火にかけてよく混ぜる。

この混合物の上に粉にした樟脳と龍延高をそれぞれ1オンス、ナツメグ4分の1オンスを投じ、先述した媒介剤を入れる。そして全てが液化し均一になるようにする。

 

 そこで先の像の頭に1つ穴を空け、像の腹の中にこの媒介剤を注ぐ。そして穴を蜜蝋でしっかりと塞ぐ。続いて、人の血、白鶏の血、馬の脳をそれぞれ4オンス、ナツメグ、樟脳をそれぞれ半オンス、溶かした羊の脂を2オンス、全て混ぜて火にかける。

 

 また、像の喉に穴を1つ空け、これを注ぎ入れる。冷えるのを待って、この穴を蜜蝋で閉じる。そして未使用の新しい細かい銀針で像の胸を刺して背まで貫き通す。これを刺しながら以下のように唱える。

 

 「アクリウス、フェンデユス、ネファレス、フェユェドス。」と。

 

 そこで像を陶製の器に入れ、周囲を泥で固める。

そして抹香と楓子香の粉、白鶏の眼をそれぞれ1オンス取り、よく混ぜる。そして像を採り上げ、1つの香炉でこれを薫香し、その町が見下ろせるような高い山に登る。

 

 そこで像が入る大きさの穴を掘り、頭を下向きつまり逆さにして埋める。壺あるいは器の口に石か煉瓦を置き、上から土をかけて全てを覆う。ここで薫香を投じ、煙が立ち昇る間に以下のように唱える。…(略)

 

 するとその王は某あるいは某民を愛し、恩顧を寛げるだろう。

 

 

 15,

 敵意を起こさせる処法。彼が言うところによれば、敵意を起こさせるために調合物を燕下させる。これは以下のようなもの。

 

 

 16,

 黒猫の胆汁、豚の脳をそれぞれ半オンス、黒犬の脂を2オンス、オポパナチスを2粒。これを調合して飲ませると敵意や悪意の霊を引き寄せる。

 

 

 17,

  (省略)

 

 

 18,

 同上。黒犬の胆汁3グラム、豚の脳、黒猫の胆汁、豚の脂、硫黄、オポパナチス、黒猫の眼、カウバクの油をそれぞれ2オンス、アゼルネクを2グラム、黒犬の脳を4オンス、尾の皮を1オンス。

これら全てをよく混ぜ、薫香を為すと、悪意や敵意が起こる。これが上述した賢者の試みた調合法であり、その効果を実証してみせたものである。

 

 

 19,20,

 (省略)

 

 

 この第10章から、動物の脳や髄など、残酷な呪いの品物が多く出てきていますし、ついには人の血が出てきました。如何にも悪魔的魔術の神髄そのものですね。  

 

第11章は次回にします。